『近江の正倉院』芦浦観音寺を訪ねて

キューピー

2010年12月15日 12:15

こんにちは、キューピーです。

今回は、去る11月23日に一般公開された草津の芦浦観音寺を訪ねてみました。


前回お知らせしました芦浦観音寺秋の一般公開にて、歴史や概要は記載しておりますので、今回は実際に参拝した感想を含めてレポートいたします。

先にも述べておりますが、この芦浦観音寺は常時参拝・参観は出来ません。年に2度、5月のGWと11月23日の祝日にのみ可能となっております。

秋晴れに恵まれたこの日、日頃固く閉ざされたいる表門は開門されており、入り口には黄色いジャンパーを着たボランティアの方々が受付をされていました。
表門は寺院には相応しくない武家様式の城門です。



重厚な表門を入ると視野は開け、小振な中門と塀ががあります。奥に入るには中門ではなく塀の途切れたところからになりますが、この途切れ方が不自然なので、たまたま塀が壊れたところを入り口にしているのか、それとも飛び石があることからもともと入口となっていたものなのか不明です。


境内に入るとまず左手に重文の阿弥陀堂が見えます。

室町時代(1393年とされている)に建てられた禅宗建築様式のお堂です。もともと芦浦観音寺の本寺は京都にあった普勧寺とされており、この阿弥陀堂は、普勧寺の本堂であったものを、天文22(1553)年に普勧寺が芦浦に本拠を移した際に移築されたものと伝えられているらしい。
本来ならご本尊である阿弥陀如来像が安置されているところであるが、諸般の事情(後述)により実物が無いのは残念です。(実物は現在、大津市の琵琶湖文化館にて保管されています)
ひのきの皮で葺かれた屋根は、その軒の反り具合もまさに壮観で、立派な造りである。





阿弥陀堂の左手の木立の中に、何か目を引く小さなお堂がありました。聖天さんです。

聖天さんとは仏教の仏様のひとり、歓喜天(かんぎてん)のことで、ヒンドゥー教のガネーシャを起源としており、仏教における守護神のひとりで商業や学問の神様されています。そう、象の頭を持った神様として知られていますね。天台宗では歓喜天(聖天)が天部の護法神として信仰されていることから、ここに聖天さんがあるのもうなずけます。
聖天さまの好物が大根であることから、お堂には大根をあしらった「違い大根」の細工がなされています。


敷地の中央部にあるのが本堂です。

本堂は質素ながら三段屋根の造りになっており、入り口の屋根は弧を描いています。瓦にはいろいろな動物をあしらったレリーフがあり、襲明の文字が刻まれています。
襲明とは老子の言葉で、世の中には捨てる人、捨てるものは無いという教えだそうです。



本堂の中では、ボランティアの方によるガイドが行われていました。
芦浦観音寺の歴史をいろいろなエピソードを入れながら、とても興味深く聞くことが出来ました。中でも面白かったのが、豊臣秀吉に尽力した功績から、9代目詮舜(せいしゅん)の望みにより、織田信長による焼き討ちですべて焼失した比叡山延暦寺の再興に尽力したそうで、今でも延暦寺では草津の方に足を向けて寝ないとされているそうです。


本堂の右手にあるのが重文の書院です。



江戸の初期までは将軍の宿泊所として使用されていたものですが、東海道が整備され、そのルートが変更されたことにより、不要となった野洲の「永原御殿」をこちらに移築さたそうです。
特に華美な装飾はなく、質素ではあるが趣き深い建物です。



豊臣秀吉直筆の書(コピー)
秀吉が主催する茶会の道具目録です。


その他にも、
石が積まれた土塁


納豆蔵









今回はじめてこの芦浦観音寺を訪れたわけですが、歴史ある建造物に尊ぶとともに、その老朽化による荒廃した様子に心を痛める事となりました。
聞くところによると数年前までは、足の踏み場もないほど雑草が生い茂り、国の重要文化財を有する寺院とは言いがたい状況にあったといいます。しかし草津ボランティアガイドの皆さんをはじめ、多くの方々のご尽力によりここまで整備されました。庭木の剪定などは 滋賀県レイカディア大学の卒業生の方々が担当されたと聞きました。
しかし重要文化財である建物自体の老朽化は目に余るものがあり、屋根の葺き替えでさえままならない状況にあるといいます。これらを維持していくことはそれなりの原資が必要となりますが、あいにくこのお寺には「檀家」というものがなく、ご住職やボランティアの方々の力だけでは限界があって当然と言わざるを得ません。

また、「近江の正倉院」と言われる芦浦観音寺の多くの文化財は、琵琶湖文化館(休館中)をはじめ近隣の博物館に預託されており、残念ながらこちらでで見ることは出来ません。実際、今回もあるべき文化財は、すべてその写真が貼ってるだけでした。それは盗難などのセキュリティ上の問題もあるのですが、言い換えればこちらで管理することが不可能だということです。

現在、行政の動きとしても琵琶湖文化館も廃止の方向に、また滋賀レイカディア大学も休校へと(一時休校となりましたが、なんとか継続することになりました)進んでいます。行政の財政難により致し方ないことではありますが、文化財の保護となると、どうしても後回しなってしまうというのが現状でしょう。
私たちも地域の財産として、行政に責任を押し付けるのではなく、私たちにできることを見出し、参加・協力していくことも大切なのではないかと考えさせられる一日となりました。

また来年のGWに一般公開されると思います。
その時にはぜひ芦浦観音寺を訪れて、
地域の財産に触れていただくと共に、
現状をご覧いただきたいと切に願います。



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芦浦観音寺

住所:〒525-0002 滋賀県草津市芦浦町363-1
電話:077-568-0548
公式サイト:http://www.biwa.ne.jp/~n-jokai/


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